墓じまいで一番つらいのは、工事でも書類でもなく「お寺にどう言うか」です。
離檀料に法律上の基準はなく、金額はお寺との話し合いで決まります。伝え方で、その話し合いの空気はずいぶん変わります。
この記事では、最初の切り出し方を文例で示し、離檀料の考え方と、話がこじれたときの相談先を書きます。
しおんは、お寺との交渉を代わりに行うことはしません。その理由も、最後に書きます。
この記事でわかること
- なぜ「お寺に言いにくい」のか(調査の数字)
- 切り出す前に決めておくこと
- 感謝から入る伝え方の文例3つ(電話・訪問・手紙)
- 離檀料の考え方と、高額を求められたときの対応
- 閉眼供養はどこに頼むか
お寺に言いにくいのは、私だけですか?
いいえ。50歳以上の300人への調査では、72.9%が「お寺へ相談しにくい」と答えています(AOMA行政書士事務所「実家のお墓問題白書2026」)。
墓じまいをした人・検討中の人230人への別の調査では、大変だったことの1位が「住職とのやり取り」で38.5%でした(墓じまいパートナーズ「墓じまい実態調査2026」)。手続きや費用より上です。
ほとんどの人が、同じところで立ち止まります。言いにくいのが普通です。
言いにくい理由は、何代も世話になった負い目と、離檀料という言葉への不安です。前者は伝え方で、後者は知識で軽くできます。
切り出す前に、何を決めておけばいいですか?
新しい供養先と、おおよその時期です。この2つが決まっていないと、お寺は「ではどうするのか」と聞くしかなく、話が前に進みません。
「まだ何も決めていないが、墓じまいを考えている」と伝えるのも誠実ではあります。
ただ、お寺の側からすると、ご遺骨の行き先が分からないまま「出したい」と言われるのは不安です。「樹木葬あじさい霊園に移すつもりです」「海に還すつもりです」と行き先を言えるほうが、お寺も安心して応じられます。
もう1つ、ご家族の中で意見がそろっていることも大切です。
兄弟の一人が「やめたい」と言っている状態でお寺に話すと、後で「聞いていない」という話になり、お寺を巻き込んでしまいます。先に家族で話すお墓のシートで、家の中の整理を済ませてください。
どう切り出せばいいですか?(文例3つ)
共通するのは、「これまでの感謝」→「事情」→「お願い」の順番です。先に結論だけ言うと、お寺には「出ていく宣言」に聞こえます。
文例1 電話で最初に伝えるとき
「ご無沙汰しております。〇〇(故人名)の墓を見ていただいている〇〇(苗字)の長男の〇〇です。
父の代から長くお世話になってまいりました。
実は私も広島に住んで三十年になり、年に一度お参りするのがやっとで、子どもたちはお墓の場所も知りません。このままではお墓を無縁にしてしまうと思い、家族で相談のうえ、墓じまいをして〇〇(供養先)に移すことにいたしました。
一度お伺いして、ご相談させていただきたいのですが、ご都合のよい日はございますでしょうか。」
電話では結論を全部言おうとせず、「お伺いしたい」で区切るのがコツです。
ご住職が「お話は分かりました、来なくてもいいですよ」とおっしゃれば、そのまま電話で閉眼供養の日取りを相談します。
文例2 お寺にお伺いして伝えるとき
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
祖父の代から八十年近く、〇〇家の墓をお守りいただきました。法事のたびにご住職にお世話になったことを、母もよく話しておりました。
私どもも年を重ね、山の上のお墓まで上がるのが難しくなってまいりました。子どもは県外におり、このお墓を継ぐことができません。
そこで、ご先祖には申し訳ないのですが、お墓をたたみ、ご遺骨は〇〇(供養先)に移してお祀りすることにいたしました。
つきましては、魂抜きのお勤めをお願いしたいこと、改葬の手続きに必要な証明にご記名をいただきたいこと、この二つをお願いにあがりました。」
お菓子を一つ持っていく。長居しない。ご住職の話を途中で遮らない。この3つで、ほとんどの場合は穏やかに終わります。
その場で「分かりました」と言われないこともあります。「一度考えさせてほしい」と言われたら、「お待ちします」と引いてください。急かすと硬くなります。
文例3 遠方から手紙で伝えるとき
県外にお住まいで、まず手紙で伝えたい方の文例です。手紙のあとに電話を一本入れると、印象がまるで違います。
「拝啓 〇〇の候、ご住職様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
〇〇家の墓所につきまして、祖父の代より永らくご供養を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、私こと、〇〇(居住地)に居を構えて久しく、両親亡きあとはお参りもままならぬ年月が続いております。子らも県外に暮らし、将来にわたってお墓をお守りすることが難しい状況でございます。
家族で幾度も話し合いました末、誠に心苦しいことではございますが、墓所をお返しし、ご遺骨を〇〇(供養先)へ移してお祀りすることにいたしました。
つきましては、改めてお電話を差し上げ、閉眼供養のお勤めと、改葬に必要な証明のことをご相談させていただきたく存じます。
長年のご厚情に深く感謝申し上げますとともに、勝手なお願いをお許しくださいますよう、お願い申し上げます。 敬具」
手紙を出して3〜4日後に電話をします。「お手紙を差し上げました〇〇です」から始めれば、話は早く進みます。
離檀料は、払わなければいけないのですか?
離檀料という言葉は、法律にも、宗派の規則にも出てきません。支払う義務が法律で定められているわけではなく、金額に基準もありません。
国民生活センターは2022年6月28日の「見守り新鮮情報」第424号で、墓じまいの際に高額な離檀料を求められたという相談を紹介し、「離檀料に明確な基準はない」として、納得できない場合はお寺とよく話し合うよう呼びかけています。
曹洞宗の宗務庁も2023年10月、離檀料について宗門としての取り決めはなく、徴収の指導もしていないと表明しています(PRESIDENT Onlineの紹介記事による)。
一方で、お寺を離れるときに、これまでのご供養への感謝としてお布施を包むのは、古くからの慣習です。
「払う義務はない」と「何も包まない」は別の話です。閉眼供養のお布施に、お礼の気持ちを少し上乗せして包む、というのが多くのご家庭の実際です。
いくら包む家が多いのですか?
墓じまいをした人への調査では、お布施(離檀料を含む)は5万〜10万円が23.8%で最多、次いで20万〜30万円が21.4%、5万円未満が19.0%でした(墓じまいパートナーズ「墓じまい実態調査2026」、支払った42人)。
ばらつきが大きく、「相場」と呼べるほど収束していません。お付き合いの長さや地域の慣習で変わります。迷ったら、ご住職に「閉眼供養のお布施は、どのくらいお包みすればよろしいでしょうか」と直接尋ねてください。失礼には当たりません。「お気持ちで」と言われたら、「同じ地域の方はどのくらいが多いでしょうか」と重ねて聞いて構いません。
高い金額を言われたら、どうすればいいですか?
まず、その場で返事をしないでください。「家族と相談します」と持ち帰ります。次に、金額の内訳を穏やかに尋ねます。閉眼供養のお布施なのか、過去の管理費の未納分なのか、お寺を離れることへの金額なのか。
内訳が分かると、話が整理されます。管理費の未納があれば、それは払うべきものです。
お寺を離れること自体への金額で納得できないときは、宗派の本山や教区の相談窓口に連絡する道があります。総務省東北管区行政評価局の資料には、離檀を受け入れてもらえない相談者に、消費生活センターが宗派の相談窓口を案内した例が載っています(2026年1月30日公表)。
消費生活センターへの相談は、電話188(いやや)で最寄りの窓口につながります。
話し合いで解決せず、法的な争いになりそうなときは、弁護士に相談してください。お金の交渉を業者に任せることはできません。
閉眼供養は、どこに頼めばいいですか?
今のお墓を見てもらっているお寺に頼むのが基本です。墓じまいで最後にお墓に手を合わせる儀式ですから、そのお墓を守ってきたご住職にお願いするのが筋です。
閉眼供養(魂抜き、お性根抜き)は、お墓からご遺骨を出す前に行います。工事の前日か当日の朝に行うことが多く、所要は20〜30分ほどです。
浄土真宗では、お墓に魂を入れる・抜くという考え方をしません。浄土真宗本願寺派は「お魂入れ」「お性根入れ」とは言わない、と公式サイトで説明しています。お寺には「墓じまいのお勤めを」と伝えれば通じます。
お付き合いのあるお寺がない方、市営墓地や共同墓地で宗派が分からない方には、しおんからご紹介できます。
新しい供養先があじさい霊園の場合、納骨式は岩屋寺のご住職に真言宗の作法でお勤めいただきます。改宗という意味ではなく、宗旨・宗派は問いません。
なぜ、しおんはお寺と交渉してくれないのですか?
お金に関わる交渉を、本人に代わって業として行うことは、弁護士にしか認められていないからです(弁護士法 第72条)。「離檀の交渉もお任せ」と書いている業者は、法律の線を越えているおそれがあります。
しおんができるのは、伝え方のご提案、お寺に渡す書類(改葬許可申請書の証明欄)のご説明、閉眼供養の日程の調整と当日の段取りです。長くお世話になったお寺に、ご自身の言葉で伝えることが、結局はいちばん穏やかな終わり方になります。
まとめ
- お寺に言いにくいのは普通。72.9%が「相談しにくい」、大変だったこと1位は「住職とのやり取り」
- 切り出す前に、新しい供養先と時期を決め、家族の意見をそろえる
- 伝える順番は「感謝→事情→お願い」。電話は「お伺いしたい」で区切る
- 離檀料に法的な基準はない。閉眼供養のお布施に感謝を添えるのが実際。金額はご住職に直接聞いてよい
- 高額を言われたら持ち帰り、内訳を聞く。宗派の相談窓口・消費生活センター(188)・弁護士へ
- 閉眼供養は今のお寺に。しおんは交渉を代行せず、伝え方と段取りをお手伝いする
お寺との関係が心配で一歩が出ない方は、まずお電話でお話を聞かせてください。0120-976-864(しおん・株式会社原田屋)。
