お墓のことは、家族が顔を合わせたときにしか進みません。
年末年始の帰省は、親と兄弟がそろい、お墓参りもする、1年で数少ない機会です。
全国40〜70代500人への調査では、墓じまいの相談先として「誰にも相談しない」と答えた人が32.8%でした(全国石製品協同組合、2026年4月)。3人に1人が、一人で抱えています。
この記事は、その最初の一歩を「家族で話す」に変えるための、切り出し方と進め方です。しおん(株式会社原田屋)が、ご相談のお電話で実際にお伝えしていることを書きました。
この記事でわかること
- お墓の話が家族でも進まない理由(調査の数字)
- 年末年始に切り出すなら、いつ、どこで
- 親に切り出す言葉の例と、言わないほうがいい言葉
- 兄弟で先に決めておく3つのこと
- 「ご先祖にうしろめたい」と感じたときの考え方
- 家族で話すシート(登録不要)の使い方と、記録の残し方
お墓の話は、なぜ家族でも進まないのですか?
言い出す側が「親を傷つける」「ご先祖に悪い」と感じ、親の側は「子に迷惑をかけたくない」と黙っているからです。調査を見ると、親も子も同じ方向を向いていることが分かります。
50歳以上300人への調査では、「子どもにお墓の負担を残したくない」と考える人が65.1%でした。同じ調査で、配偶者のいる人の72.5%が「夫婦で十分に話し合えていない」と答え、72.9%が「お寺へ相談しにくい」と答えています(AOMA行政書士事務所「実家のお墓問題白書2026」)。最も多い悩みは「何から始めればよいか分からない」でした。
つまり、親の多くは「このお墓を子に背負わせたくない」と思っているのに、子は「親に言い出せない」と思っている。すれ違ったまま、年月だけが過ぎます。
墓じまいを検討する理由の1位は「お墓が遠方にある」で52.0%です(鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」2026年、n=733)。
県外で暮らす子が、年に一度の帰省でお墓参りをする。その帰り道が、話を始める場所になります。
年末年始に切り出すなら、いつ、どこがいいですか?
お墓参りの帰り道か、仏壇の前です。食卓で、親戚のいる場で、お酒の入った席では切り出さないでください。
お墓参りの直後は、全員がお墓の現状(草、坂道、石の傾き、周りの手入れされていないお墓)を見たばかりです。「このお墓、これから誰が見ていくんだろうね」が、自然に口にできます。
年末年始は市役所が休みです(地方自治法第4条の2に基づいて各市が条例で定め、多くは12月29日から1月3日)。手続きは進められないので、この期間は「話すこと」と「調べておくこと」に充てるのが現実的です。
話す時間は、長くても1時間です。1回で決めようとせず、「今日は現状を確かめて、それぞれの気持ちを聞くだけ」と最初に言っておくと、親も身構えません。
親に、どう切り出せばいいですか?(言葉の例)
結論からではなく、親の気持ちを聞くところから始めてください。「墓じまいしよう」ではなく、「お父さん(お母さん)は、このお墓をどうしたいと思ってる?」です。
言葉の例を3つ挙げます。
お墓参りの帰り道に。
「このお墓、これから誰が見ていくんだろうね。私は年に一度来るのがやっとで、うちの子たちは場所も知らないから」
仏壇の前で、親の希望を先に聞く。
「お父さんとお母さんは、自分たちのこととご先祖のお墓のこと、どうしたいと思ってる? 今日決めなくていいから、気持ちだけ聞かせてほしい」
県外に住む子から、正直に。
「無縁にしてしまう前に、相談したい。管理費のこと、お寺のこと、誰の名義になっているか、今のうちに教えてほしい」
言わないほうがいい言葉も3つあります。
「墓じまいしよう」と結論から言うこと。「お金がかかるから」とお金から入ること。兄弟の一人が決めてから親に「報告」すること。この3つは、親には「お墓を捨てる話」として届きます。
親が「まだ早い」「私が死んでからにして」と言ったら?
その日は引いてください。ただし「今日は決めない。知っておきたいだけ」と伝えて、4つのことだけ聞いて帰ります。
お墓の名義人(今の使用者)は誰か。お寺の名前と宗派、または墓地の管理者。中に入っているご遺骨は何人分か。年間の管理費やお寺への費用は、いくらで、誰が払っているか。
この4つが分かっているだけで、いざというときの手続きがずいぶん早くなります。市営墓地では、名義人が亡くなると改葬や返還の前に承継の手続きが要ることがあり、名義や書類の所在が分からないと、そこで止まるからです。
「死んでからにして」は、多くの親が口にします。
その言葉の裏には「自分の代で先祖の墓を閉じたくない」という気持ちがあります。それを否定せず、「お父さんが元気なうちに、お父さんの考えを聞いておきたい」と返してください。決めるのは後でいい、と繰り返すことです。
兄弟では、何を先に決めておけばいいですか?
3つです。誰が窓口になるか。費用の分け方の「考え方」。ご遺骨の行き先は、人ごとに希望が違ってよいこと。金額が出る前に、ここまで決めておきます。
石材店への調査では、墓じまいの発注者は現在の使用者本人が37%、お墓を継ぐ予定の人が25%、使用者の親戚が19%でした(全国石製品協同組合「2023年度 お墓じまいアンケート」、加盟石材店184件)。本人以外が6割を超えます。子や親戚が動かすのが、墓じまいの普通の形です。
1つ目の窓口は、お寺・市役所・業者と話す人を一人に決めることです。
複数の兄弟が別々に業者へ電話すると、見積の条件がずれ、お寺にも違う話が伝わります。窓口は一人、決めるのは全員、が原則です。
2つ目の費用は、金額が出る前に「考え方」を決めます。
人数で割るのか、お墓を継いでいた人が多めに持つのか、工事費は共同で供養先の費用は「誰のご遺骨か」で分けるのか。見積書が出てから分担を話し始めると、金額の大きさに気を取られて感情的になります。
なお民法897条は、お墓を受け継ぐ人を慣習や故人の指定で決めると定めていますが、費用を誰が払うかは定めていません。分け方は家族の話し合いで決めるものです。
3つ目は、ご遺骨の行き先です。
「父は樹木葬に、祖父母は海に」というように、ご遺骨ごとに行き先を分けることはできます。兄弟それぞれの希望が違っても、全員を一つに揃える必要はありません。行き先の比べ方は墓じまいの後、遺骨をどうするかに書きました。
墓じまいをやめた理由のうち「家族・親戚から理解を得られなかった」は、前回調査の21.1%から7.8%に下がっています(鎌倉新書、同調査)。家族の合意は、以前ほど高い壁ではなくなっています。
「ご先祖にうしろめたい」と感じたら、どう考えればいいですか?
その気持ちは正当なもので、消す必要はありません。ただ、お参りできないまま無縁にしてしまうことのほうが、ご先祖に対してうしろめたいのではないか、と一度考えてみてください。
同じ調査で、墓じまいをやめた理由に「先祖にうしろめたい気持ちになった」を挙げた人は11.1%でした。費用の次に多い理由です。
うしろめたさは、「捨てる」という言葉で考えるから生まれます。墓じまいは、お墓を閉じる前に閉眼供養でお別れをし、ご遺骨を一人ずつ取り出して洗い、新しい場所に納めて、また手を合わせる営みです。供養を終わらせるのではなく、続けられる形に移すことです。
総務省が全国の市町村に行った調査では、公営墓地や納骨堂を持つ765市町村のうち58.2%で、管理する人がいなくなった無縁墳墓等が発生していました(総務省行政評価局、2023年9月)。
放置されたお墓は、やがて行政や管理者の手で処分されます。そうなる前に家族の手で移すことは、ご先祖への責任の果たし方の一つです。
うしろめたさは、「ちゃんと話し合った」という事実で薄れます。
一人で決めた墓じまいは、あとで誰かに責められたときに揺らぎます。家族で話し、記録を残した墓じまいは揺らぎません。だから、話し合いの記録が大切です。
家族で話すシートは、どう使えばいいですか?
A4・1枚の書き込み用紙です。ガイドブックのページから、登録なしで受け取れます。印刷して1枚を家族で囲み、分かるところだけ埋めてください。
シートは4つの欄でできています。
1つ目は「うちのお墓は、今どうなっているか」です。
場所、お墓の種類(お寺・市営・共同墓地・個人の土地)、お寺の名前と宗派、名義人、名義人はご存命か、管理費、最後にお参りした時期、ご遺骨の人数。親にしか分からないことが多い欄です。帰省のうちに埋めてください。
2つ目は「これからのことを、それぞれどう思っているか」です。
一人ずつ、名前と今の気持ちを一言で書きます。賛成・反対・わからない、どれでも構いません。気がかりなこと(お寺、費用、ご先祖への気持ち、親戚の目)も書きます。この欄は、反対の人の言葉をそのまま書くことが大切です。
3つ目は「もし墓じまいをするなら」です。
ご遺骨をどこへ移したいか、いつごろまでに、費用はどう分けるか、お寺や管理者に伝えるのは誰か、お墓の写真を撮りに行けるのは誰か。「まだ決めない」という選択肢を残してあります。
4つ目は「次に決めること(1つだけ)」です。
今日決めなくていいこと、次に話す日、それまでに誰が何を調べるか。ここが埋まれば、その日の話し合いは成功です。
全部埋まらなくて構いません。空欄があることが分かるだけで、次に調べることがはっきりします。
話し合った内容は、どう残せばいいですか?
シートに日付と参加者を書き、写真に撮って、家族のLINEグループなど全員が見られる場所に置いてください。決めたことと、決めなかったことの両方を残します。
残す理由は3つあります。
後で親戚から聞かれたとき、紙が1枚あれば説明が楽になります。お寺に「家族で相談のうえ」と伝えるときの裏付けになります。そして、費用や行き先で意見が割れたとき、「あのとき、こう話した」に戻れます。
親の言葉は、要約せずにそのまま書いてください。
「お父さんは『自分が元気なうちに整理したい』と言った」という一行が、数年後に兄弟を助けます。
話し合いのたびにシートを新しくせず、同じ紙に日付を足していくと、考えが変わった経緯も残ります。
話がまとまったら、次は何をすればいいですか?
お墓の写真を撮ることです。正面・側面・区画全体・周りの道の4枚があれば、概算の見積ができます。市役所が開く1月4日以降に、手続きの順番を確かめます。
春のお彼岸(3月)までに終えたい場合は、改葬許可証が届くまでの日数(市によって違い、光市は1〜2週間程度と案内)、お寺との閉眼供養の日程、工事の日程を逆算します。年始に動き始めれば間に合うことが多いですが、お寺の都合で前後します。
最初の一歩は、お寺への相談でも、業者への見積でも構いません。お寺への伝え方はお寺への伝え方と離檀料の考え方に、費用の内訳は墓じまいの費用は何にいくらかかるのかにまとめました。
県外にお住まいで、帰省中に写真を撮りそびれた方は、しおんにお知らせください。担当者が見に行って写真でお送りします。墓じまいをお考えの方の現地確認は無料です。
まだ墓じまいを決めていない方は、お墓参り代行でお墓を守りながら考えていただく方法もあります。流れは県外から山口の実家のお墓をしまう全手順に書きました。
まとめ
- 墓じまいの相談先は「誰にも相談しない」が32.8%。親の65.1%は「子に負担を残したくない」と思っている。このすれ違いを埋めるのが家族の話し合い
- 切り出すのは、お墓参りの帰り道か仏壇の前。結論からではなく「どうしたい?」と親の気持ちを聞く
- 親が「まだ早い」と言ったら引く。名義人・お寺・ご遺骨の人数・管理費の4つだけ聞いて帰る
- 兄弟では、窓口を一人、費用の分け方の考え方、ご遺骨の行き先は人ごとでよいこと、の3つを金額が出る前に決める
- 「ご先祖にうしろめたい」は正当な気持ち。無縁にするより、話し合って移すことが責任の果たし方
- 家族で話すシート(登録不要)に書き、日付と参加者を入れて写真で残す
ご家族で話す前に、聞いておきたいことがあれば、お電話ください。相談だけで構いません。
0120-976-864(しおん・株式会社原田屋。24時間受け付け。出られないときは折り返します)。お見積りは無料です。写真で概算見積からもどうぞ。
